雨の魔法が解けるまで
このままでいさせて
雨は別に嫌いじゃない。
豪雨はやめてくれって思うけど、しとしとぴっしゃん的な風情のある雨はむしろ好き。
雨の日に家に居るのも好き。
なにもしないでも許される気がするし、偏頭痛だったり不機嫌だったりしても、雨のせいにできるから。
雨は嫌いじゃないけど、いかんせん傘が嫌い。
手が塞がるのがどうにも苦手であるし、人混みを歩くと傘がぶつかったりして少し腹がたつ。
この前なんて目のギリギリ横にガッツンぶつけられたのに、謝られるどころか目も合わせないし、さすがに舌打ちしてしまった。
しかも相手が男だったので
このクソチビが、って心の中でこっそり毒づいてしまった。
この街に来てから私は性格が悪くなったかもしれない。
というか元来の性格の悪さが表に出るようになった、というべきか。
そうやって吐き出さないとやっていけないのかもしれない。
消耗する街だな、と思う。
でもこの街に来たかったのは何故だろう。
音楽や映画や小説に描かれる
東京という街に興味があったからだ。
そこに出れば自分も主人公になれるとでも思っていたのだろうか。
そんなことしなくても
自分の人生は嫌でも自分が主人公なのに。
かといって帰りたいとも思わないし
周りの人が自分に無関心なこの街が、わたしは気に入っているのだと思う。
他人への興味が娯楽であるような田舎町で育ったせいか、無関心の渦の中を泳ぐのが気持ち良かったりする。
雨だからそんなことをなんとなく思って
雨だからそんなことをだらだらと書いてみた。
折り畳み傘が欲しいことを思い出した。
3年ほど前に買った1,000円程度の折り畳み傘は、アラサーになった自分が使うには少し可愛すぎるデザインな気がするし、なんせボロボロだ。
開きは悪いし、開けば一箇所骨が折れている。
でも使えないことはないし
毎日持ち歩いてはいるけど毎日使うものではないので、なんとなく買いあぐねている。
自分の誕生日にでも買うか。
とかいって買わないんだろうな。
自分の誕生日に自分で何かを買ったことがあったっけ?
はて、記憶を遡っても思い浮かばない。
ちょっとした無駄遣いの言い訳にしたことはあるけども、なにか記憶に残るものを買った覚えは無いらしい。
自分にもあまり関心が無い自分らしいなと思った。
人の名前と顔を覚えるのが苦手なように、友達と以前話した内容を覚えていないことが多いように、わたしは他人にも自分にも興味が薄い。
そのくせ犯罪心理や凶悪殺人、サイコパスなんかに興味を持ったりすることはままあるから、人間に興味がないわけではないらしい。
なんなんだろうな。
架空の人物的なものには興味があるんだろうか。
自分とは程遠い誰かに興味があるんだろうか。
小説や映画が好きなのも
とどのつまりそういうことのような気がする。
雨の魔法は今日のうちは解けないらしい。