ペトリコール - forget me not -

雨上がりの匂いと勿忘草

わたしたちはいつでもハッピーエンドを待ってるの

簡単な正解を選んだあとで

簡単な正解を選んだあとで なぜかまた傷ついてる それにも気付いてる

小さな成功体験を積み重ねたい、と迎えた2023年。「日記は続かないよなあ」ということで始めてみたのは6 minutes diary。

朝晩3つずつ、各質問に1分で答えるというもの。合計6つの質問は毎度同じもので、今のところすっぽかした朝や寝てしまった夜もあるけれどつらつらとペンを走らせることに成功している。

人に会わず1日を終えることも多いので、回答が困難な日もある。というかそういう日の方が多い。

でも、なにかあった日や誰かと会った日に良い気分になれる質問ばかりなので、わりと心に栄養が行き渡るいい習慣になるかもしれない、と感じている。


「小さな成功体験をしたい、日常で実行できることで、それをルーティン化して継続して、継続できたという小さなものでいい」

年末年始帰省をしていない私に会おうと声をかけてくれた友人にそう話すと、翌日その小さな成功体験にぴったりの参考動画を送ってくれた。

わたしが口にした独り言のような話を覚えていてくれてシェアしてくれること。それがどれだけ嬉しいことか、うまく伝えられたらいいのにな。

2023年の初映画は『そばかす』。

近所にできたけどまだ行けていない映画館で上映されていたのと、好きな役者さんが出ているから観に行った。

とてもとても良かった。良かったというか私好みの作品だったというべきか。

アセクシャルという言葉を知ったのは最近のことだし、細かくいうと少し違うのかもしれないけれど、主人公の女性は同性異性問わず恋愛感情や性的欲求を抱かない人だった。

共通の価値観と共通の趣味で仲良くなった異性とは、恋愛感情を持たれてしまった故に、それに応えられないために、そして応えられない理由を相手が受け入れられないために疎遠になった。

家族や友人や同僚、彼女を取り巻く人々それぞれの価値観、正義、本質がとてもリアルに描かれていた。

サブタイトルなのか、(not) heroin moviesという言葉が添えられているのもとても良かった。

そうだ、ヒロインじゃないんだ、と。

元々は1/4までのつもりだった冬季休暇を1/9まで延ばした理由であるDiorの展示にも足を運んだ。

チケットが全然予約できなくて、渋々平日の真っ昼間に清澄白河まで足を運んだ。

美しさにため息しか出なかったその展示は、作品の美しさはもちろんだけど、その美しさを最大限に引き出す展示の仕方も素晴らしかった。

ジョンガリアーノの華やかなドレス、ラフシモンズのシックでミニマルなデザイン、ジャンブランコフェレの素晴らしいフォルム。

デザインはもちろん、素材やパターンの緻密さ、縫製の技術に気が遠くなる思いだ。

休暇最終日は、1時間半ほどかけて神奈川県の葉山、愛するMan Rayの展示へ。

千葉ではオブジェ展、葉山では女性が登場する作品をメインにした展示。

千葉の方は休館日だったこともあるし、知人に美術館のロケーションが素敵だよ、と教えてもらったこともあり海辺の町へと足を運んだ。

年末年始に会ってくれた友人が「旅したらいいよ」と言ってくれたことも少なからず影響している。

旅を綴ればいいよ、と。

とても嬉しかった言葉があるのだけどうまく思い出せない。私のテキストをたまに覗いてくれているらしかった。


気圧に弱く面倒くさがりで気分屋。旅に向いていないわたしは少しの遠出も「旅」と位置付けることにしている。

海岸沿いに建つその美術館からの眺めには、美しい地平線と波の音。

30分ほど波の音を聴きながら、手をつけていなかった本をパラパラとめくった。 

Man Rayは、というか同時期に活躍していた芸術家たちは恋多き人が多く、パートナーとなる幾人かの女性たちは華やかなことはもちろん、自立心が高かったり移り気だったりしている人がほとんどだ。

パートナーは数年単位で変わり、もちろん作品や作風も変わっていく。

でもどの作品も、妖艶でありしかし下品ではなく、もっと被写体である彼女らを知りたいと思わせるものばかり。

オリジナルを破壊し再構築し、別の作品へと昇華するそのスタイルは、オリジナルに重きを置くNFTアートに対するダダイズムのようだ、と同行者が述べた感想に大きく賛同した。


夜に観た映画は85年〜90年前半の年代の多くが名作だ、バイブルだ、と語る『スラムダンク』。

観る気はなかったのに、あまりに評判がいいのでそれならば、と鑑賞したら、とにかく感動して大変だった。

ストーリーはもちろんだけど、メインの主役キャラを置きつつ、登場人物全員が主役に負けず劣らず輝く作品を作り上げた井上雄彦さんの才能に涙が出る。


弱小校なりに一生懸命だった部活には、悔しくて泣いた試合もあったことを思い出した。


原作と大きく変わらず、でも映画オリジナルの演出もあり、後世に語り継ぎたい作品だな、と改めて実感した。


まるで備忘録のような駄文だけれども、2023年早々、心を動かしてくれる瞬間にたくさん触れられて幸せだ。


ゆるゆるとマイペースに、でもできるだけ勤勉に、成功体験と心踊る出来事をたくさん重ねていけますように。

thanks for comming! see you.